──それは、最も哀しき神話

世界観

哀しき神話の序章






──人間と、人ならざるモノ……吸血鬼が共存する大国、シェーン。




空を仰げば移り変わる彩が見える。横を向けば鮮やかな鳥が尾を引き飛翔し、美しい鳥を追う獣の仔がちらりと横切る。


美しく、自然豊かな大国。




吸血鬼は人にない力を活かして人間に助力し、人間はその技術を分け与え、そうしてこの国は生きて来た。千年を超える太古より、そうして。


平穏でない時代もあった。血と涙も枯れる惨劇があった。それでもこの大地を踏んで、今度こそ穏やかに生きて行こう。






────嗚呼、空が紅い。天が変じ、大地が割れている。






真実の平和を切り崩し、血濡れた翼が大地を穿とうとしている。


二千年前の旧きページが、今再び蘇ろうとしている。




これは、異なる二つの種族が抗い手を伸ばす物語。剣を翳し、力を振るい、その刃が目指す敵を討て。




《今宵開くは表紙もページも傷と涙に崩れた"神話"。神を語り神を騙る、開幕の鐘が鳴っている》